質 問

 
 今月16日、政府は、ゴールデンウィークを前に、感染者が多い都市部から地方へ人の流れを防ぐため、緊急事態宣言の対象を全国に広げたところである。
 県境を越え感染がまん延すれば、重症化リスクが高いといわれる高齢者を多く抱える本県にとっても、地域医療の崩壊を引き起こしかねず県民生活と経済に甚大な影響を及ぼす。
 県では、感染が急拡大している近県からの人の流れをくい止めるため、県内の遊興施設などに5月6日までの休業について要請されたが、このたびの対策は、感染症から県民の命を守ると同時に、感染症拡大に起因する未曽有の経済危機・苦境から県民の命を守り抜かなければならない極めて重大な危機事象であり、まさに本県としての危機管理の体制の在り方が問われている。
 まずは、このウイルスとの闘いを県全体が一丸となって闘い抜くとの思いをすべての県民が共有した上で、感染拡大防止に資源を集中投下していく必要がある。
 今回の補正予算をより実効性のあるものとするためにも、全庁一丸となった危機管理意識と情報共有、部局横断的な指示系統、調整機能を確保し、十分な応援体制のもとで、あらゆる分野において先を見越した的確かつ統一性のある対策が講じられる体制を早急に整える必要がある。
 そこで、新型コロナウイルス感染症に起因し、本県が直面している危機事象に臨むにあたり、危機管理体制の充実・強化にどのように取り組まれるのか伺う。
 

村岡知事

 
 友広議員の御質問にお答えします。
 まず、新型コロナウイルス感染症への対処についてです。
 新型コロナウイルスの感染拡大は、県民の生命や健康をはじめ、社会・経済活動にも多大な影響を与える未曾有の極めて重要な危機事象であると認識しています。
 本県では、本年1月に、「新型コロナウイルス感染症対策本部」を立ち上げ、本部員を中心に部局間の連携を図りながら、総合的に感染症対策を進めているところであり、感染症の相談窓口を設置するほか、ウイルス検査体制や受入医療機関の診療機能の充実を図ってきたところです。
また、感染拡大防止に向け、県有施設の休館や学校の休業などを行うとともに、相談窓口の設置や制度融資の拡充などにより、県内中小事業者等への支援も行うなど、幅広い対策を講じてきたところです。
 こうした中、今月16日に、「緊急事態宣言」の対象が全都道府県に拡大されたことを受けて、本県では、不要不急の外出自粛の呼びかけや遊興・遊技施設等に対する休業協力要請を行ったところです。
 また、全国的にも、都道府県をまたいだ移動の自粛など、8割程度の接触機会の低減を目指した取組が進められていることに伴い、本県の社会・経済活動にも大きな影響が及んでいるところです。
 このため、今後は、これまでの「新型コロナウイルス感染症対策本部」、この体制をより充実をして、感染拡大防止対策のみならず、県民生活や経済活動の安定確保に向けた対策を強力に推進していくため、県組織をあげた対応をより強化していきます。
 具体的には、県民生活に係る様々な対策を講じるとともに、県民への適時・適切な情報提供を行うため、県が実施する感染症対策全般の総合調整を行う「危機管理チーム」と、県民への情報提供等を行う「情報関連対策チーム」、これを新たに対策本部内に設置します。
 まず、「危機管理チーム」では、県内外の感染状況を踏まえながら、国の対処方針に沿って、的確かつ統一性のある感染拡大防止策が講じられるように、関連情報の集約、部局横断的な調整、感染拡大防止策の検討・指示などを行います。
 また、「情報関連対策チーム」では、県内の感染状況や感染拡大防止策等について、県内市町との情報共有を図るとともに、各種メディア等を通じて、県民や県内企業への周知、注意喚起、こうしたことを行って、感染拡大防止に向けた取組等を要請します。
 さらに、こうした体制強化と合わせまして、対策本部の総合調整を行う防災危機管理課に3名の職員を配置したほか、感染拡大防止に取り組む健康増進課には8名、保健所に13名、環境保健センターに2名の職員を配置するなど、県組織をあげての対応を進めているところです。
 目下の最重要課題であります新型コロナウィルス感染症に万全の対応を図るため、危機管理体制の充実・強化を図り、県議会、県民の皆様と一体となって、新型コロナウイルス感染症対策に全力で取り組んでまいります。

 質 問

 
 医療への負担軽減のためには、感染者数を拡大させず、拡大防止に向けたクラスター対策を抜本的に強化していく必要がある。また、感染者急増に備え、重症者対策を中心とした医療提供体制の確保を強力に進めていく必要がある。
さらに、高齢者介護施設や保育所など、必要なサービスを継続している方の声にもきめ細やかに対応する必要がある。
 今後の学校再開にあたっては、子どもたちの不安を取り除き、安心して学べる環境としていくためにも、学校における感染症対策を徹底することが重要である。
 また、学校が閉鎖され、学ぶ機会を持てないことは、子どもたちが今後の人生を送る上で大きなハンデとなりかねず、休校による影響を最小限に抑える取組が不可欠である。都市部等では、オンライン学習の取組が進められており、本県の子どもたちのためにICT環境の早急な整備が必要である。
県内外からの客足が途絶え、宿泊や宴会のキャンセルが相次ぐなど、観光関連産業の落ち込みが止まらず、飲食業では、外出や会合の自粛により売り上げが大きく減少し、当面の資金繰りさえも逼迫しているとの悲痛な声を聞いている。
 加えて、先週21日からの休業要請により、多くの方が事業休止を決断せざるを得ない状況に追い込まれている。休業要請の実効性を担保し、外出自粛に伴う経済活動への影響を緩和するため、血の通った支援が不可欠である。
また、この逆境を乗り越えようと必死に取り組んでおられる事業者の方々をしっかりと支えていくことも重要である。
さらに、職を失う方が増えており、日々の生活に困窮しかねない状況に、迅速で手厚い支援が必要である。
こうした厳しい状況の中、知事は補正予算を3本の柱により編成されたが、特に意を尽くした点を含め、今回の補正予算についての知事の考え方、補正予算に込めた思いを伺う。
 

村岡知事

 
 次に、補正予算の考え方についてのお尋ねのうち、補正予算に込めた思いについてであります。
新型コロナウイルスによる感染、これが全国に拡大をしている中で、県内での感染の拡大、これを何としても防いでいく、そして、1日でも早く収束をさせて、県民の皆様の安心、そして健康を守りたいと考えています。
 そのため、私はまず第一に、新型コロナウイルスから県民の皆様の命と健康を守るということ、そして、大変厳しい状況に今まさに直面をしている県民生活、そして地域経済、これをしっかりと支えていくということ、このことに特に意を尽くして、当面緊急的に実施すべき取組について、過去最大規模となる686億円の補正予算を編成しました。
 まず、人の移動による感染拡大を防ぐため、遊興・遊技施設等への休業要請を行ったところであり、その実効性を高めるため、御協力をいただいた事業者に対し、最大30万円の協力金を支給します。
また、地域における感染防止対策として、社会福祉施設や学校に対する消毒液等の購入支援、社会福祉施設等における施設改修や設備整備に対する支援等を行います。
 さらに、今後の感染拡大に備えて、PCR装置の増設により検査体制を強化するとともに、入院患者受入のための病床数を40床から320床に大幅に拡充することや、軽症者が療養するための宿泊施設等の借上げのほか、周産期医療体制の充実など医療提供体制の強化を図ります。
 このような感染拡大防止対策を講じるとともに、外出自粛等により、生活や経済のあらゆる面において生じている影響についても、しっかり対処していきます。
 まず、外出自粛等の影響を強く受けて売上げが減少している飲食店等に対しては、営業の維持に要する経費に一律10万円を補助するほか、厳しい状況を乗り越え新しい活路を見出すための取組に補助を行い、中小企業等の事業活動の維持、発展を支援します。
 また、中小企業制度融資において、感染症の影響による資金需要の拡大に対応するため、実質無利子の新たな資金を創設するとともに、リーマンショック時を超える支援となる経営安定資金の新規融資枠、これも大幅に拡大をして、県内の中小企業等の資金繰りを支援します。
 さらに、学校の臨時休業に伴い、タブレット端末等の貸与を通じて家庭での学習機会の確保を図るとともに、学校の再開に向けて、スクールカウンセラー等を全公立学校に派遣をし、長期休業により児童生徒が抱える学校生活への不安の解消、これに取り組んでいきます。
 加えて、県民の当面の生活不安の解消に向けて、生活福祉資金の緊急貸付資金の積増し、また家計急変世帯の高校生に対する授業料減免等を行います。
 私としては、県民の皆様の命と健康、これを守ることを第一に、社会・経済への影響を最小限に食い止めることができるように、この補正予算を通じて、感染拡大の防止や県民生活の安定、県内経済の下支えに全力で取り組んでまいります。
 その上で、さらなる感染拡大防止策や県内経済のV字回復のための反転攻勢に向けた需要喚起、そして社会変革の推進に必要な取組等については、今後の感染の状況を踏まえ、適時適切に追加し、機動的に実施してまいります。   

 質 問

 
 今回の補正予算額は、過去のリーマンショック時等の補正規模を大きく上回る686億円となっているが、眼前に立ちふさがる数々の課題に的確に対応しつつ、新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機を乗り切り、事態収束後のV字回復を図っていくためには、今後も相当の資源と財源の集中投下が必要となってくる。
 そこで問われるのが、まさに、山口県のリーダーである知事の政治家としての政策判断であり、県民の命と健康を守り、県民生活と経済活動を回復させることに一点集中するためには、国の支援に頼るだけではなく、本県が抱える様々な政策課題への対応の優先順位付けをしていくことが求められてくると思うが、知事はどのように考えておられるのか。
 山口県が新型コロナウイルスからの生き残りをかけた闘いに打ち勝っていくためには、知事ご自身が腹を据えられ、現在、進められている行財政構造改革の取組は、一時凍結または中止するという判断もすべき時に来ているのではないかと思う。
 そこで、戦後最大の危機ともいうべき新型コロナウイルス感染症からの生き残りをかけた闘いに全精力を傾注していく必要がある中で、これらの政策課題にどのように対処していかれるのか、知事の考えを伺う。
 

村岡知事

 
 
次に、政策課題への対応についてです。
私は、人口減少・少子高齢化が進行する中で、将来に希望をもって暮らすことができる山口県を創っていくため、自立・安定的な行財政基盤の構築に向けて、行財政構造改革に取り組んできたところです。
 具体的には、総人件費の縮減、全事業の見直しなど、本県の歳入水準に見合った歳出構造への転換に向けた取組や、臨時的・集中的な財源確保対策により、100億円を超える基金を確保するなど、一定の成果が上がってきています。
 こうした中、この度、新型コロナウイルス感染症によって、県民の命や健康、これらが脅かされる危機的事象が発生をしたことから、今般、「感染拡大の防止」や「県内経済の下支え」など、当面緊急的に実施すべき取組について、過去最大規模となる686億円の補正予算を編成したところです。
 その上で、未だ事態の収束が見通せないことや、現下の大変厳しい経済情勢等を踏まえると、私は、今後も、さらなる感染拡大の防止や、県内経済のV字回復のための反転攻勢等に向けて、人的資源・財源の集中投資を行う必要があると考えています。
 このため、こうした非常事態にあっては、現在、県政が抱えている様々な政策課題について、取捨選択を伴う思い切った優先順位付けが必要となります。
この度の補正予算の編成においても、財源調整用基金を約46億円取崩して対応したところであり、お示しの、現在進めている行財政構造改革の取組については、一時凍結をし、この未曽有の危機に対処するため、必要な予算措置等を迅速かつ機動的に講じてまいります。
 私は、県議会との連携の下、不退転の覚悟を持って、新型コロナウイルスから県民の皆様の命と健康を守り、県民生活の安定と県内経済の回復が図られるよう、全精力を傾注してまいります。

 質 問

 
 自民党として異例のことではありますが、未曾有の事態という強い危機感から、敢えて、再質疑を行います。
 ただ今、村岡知事より、補正予算の考え方等についてご答弁をいただきましたが、このたびの新型コロナウイルス感染症の拡大により、県民の生活は一変をしました。
 「突然お客さんが来なくなった」「予約が9割以上キャンセルになった」「自助努力だけではとても経営が存続できない」「休校の長期化により子どもが学習から取り残されるのが心配」などなど、私のもとには、県民・事業者の皆様方の悲痛な叫び声が津波のように押し寄せております。
 こうした中で本日提案された補正予算は、いずれの事業も、感染拡大の防止、県民生活の安定、県内経済の下支えに向けた対策として必要なものと一定の評価はしており、当然、関係議案全てに賛成するとともに、補正予算成立後の速やかな執行を望むものであります。
 しかしながら、敢えて言わせていただきますと、今回の補正予算に盛り込まれた内容は、あくまでも当座の対応を中心としたものであり、深刻さを増すばかりの地域経済をどのように下支えをし、県民生活を維持させていくのかなど、県民・事業者の不安を解消するためのメッセージ、県民・事業者に寄り添った対策としては質・量ともに、まだまだ不十分なものだと言わざるをえません。
 加えて、国の緊急経済対策では「強靱な経済構造の構築」など未来に向けた布石を打った建て付けとなっているのに対し、本県では、例えば、GIGAスクール構想に関しての取組は当面見送られるなど、収束後の反転攻勢に向けた需要喚起と社会変革の推進の部分がすっぽり抜け落ちている、不十分な状態となっているのであります。
 先ほどから申し上げておりますように、よほどの覚悟を決めなければ、この危機的状況を乗り切ることはできません。私どもは、今回の新型コロナウイルス感染症との戦いは、山口県の生き残りをかけた戦いであると考えております。
 いま、県内では、学校の一斉休業、県外への移動や不要不急の外出の自粛、そして休業要請が出される中で、県民・事業者・学校・医療・福祉関係者をはじめ、多くの方々が、それぞれの立場で、3密を避ける努力を重ねるとともに、ご自身の痛みや不自由も顧みず、知事のメッセージに応え、新型コロナウイルスから隣人の命と山口県を守るべく、まさに防長魂と郷土愛で、懸命の対応を続けておられます。
 こうした、山口県人の気概、県民・事業者等の思いにしっかりと応えていくのが、山口県のリーダーである知事の務めであります。不自由を強いられ、日常生活や経済活動等に多大な影響を受けている県民・事業者の皆様が、希望を持って前に進んでいくことができるよう、今回の補正予算はもとより、今後の追加対策を含めて、資源と財源を集中投下し、現下の実情に寄り添った出来うる限りの対策を講じていただきたいと思うのであります。
 そこでお尋ねを致します。
 縷々、意見を申し上げましたが、知事は、今回の補正予算をどのように評価しておられるのか、また、今後の追加対策の必要性についてどのようにお考えなのか、改めて、ご所見をお伺いをいたします。
 終わりに、自由民主党として、このたびの状況を鑑み、ゴールデンウィークまでの補正予算成立を強く望んでおりましたところ、執行部におかれては、短期間に補正予算をまとめあげられ、4月中に臨時議会に上程をいただきましたことに対し、心から感謝申し上げます。
 また、我が自由民主党は、今臨時会に臨むに当たって、本県の危機的な状況を重く受け止め、目に見える形で、県民の皆様と痛みを分かち合う必要があると判断し、議員報酬の臨時的削減を行うべく、各会派のご理解・ご協力をいただいたところであります。
 新型コロナウイルスとの戦いは、まさにこれからが正念場であります。
 県におかれては、今後の取組を進めるにあたり、県内市町との間に齟齬が生じることがないよう、市町との更なる情報共有と連携強化を図るとともに、この戦いに勝利すべく、躊躇なく思い切った対応を頂きたいと思うのであります。
我が自由民主党は、県民や事業者の皆様の不安を解消し、県民生活と県内経済の安定に向けた反転攻勢のために、引き続き、全力を尽くす所存であることを申し上げ、会派を代表しての質疑を終わります。
 

村岡知事

 
 友広議員の再質問のうち、まず、今回の補正予算の評価についてお答えします。
 県民の皆様の命と健康を守る、このことを第一に考えて、感染拡大の防止、それとともに、県民生活の安定や県内経済の下支えについても、現時点で緊急的に実施すべき取組を、可能な限り今回の補正予算に盛り込みました。
 この非常事態に対しましてしっかりと対応すること、このことが本県における目下の最優先課題であると認識しています。災害等の不測の事態に備えて積立を行ってきた財源調整用基金、現在111億円の残高でございますが、これも46億円取り崩して、その財源として活用しながら、必要な施策の構築を行ってきたところです。
 感染拡大防止対策の充実強化、そして、現在お困りの方に一刻も早く支援が届くように、この度の補正予算の執行に全力で取り組んでいきたいと考えています。
 次に、今後の追加対策の必要性についてでございます。
 新型コロナウイルス感染症は、生活、また地域経済、あらゆる面において、甚大な影響が及んでいます。また、こうした影響が長引くことも想定して、適時適切に、追加の対策を行っていく必要があります。
 また、感染症の影響の収束後に、県内経済のV字回復のための反転攻勢、これを行うことに向けて、国の緊急経済対策も最大限に活用して、需要喚起、そして社会変革の推進に必要な対策を積極的に行っていく必要があります。
 県民の皆様の命と健康を守っていく、そして社会・経済への影響を最小限に食い止めていく、そのためにこうした対策に財源を集中投資をして、しっかりとした対策を講じてまいります。